『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件―』
豊田正義
平成21年初版
新潮文庫
2013年12月24日
所感:カラシニコフ氏の訃報について
AK47の開発で知られるミハエル=カラシニコフ氏が亡くなった.私としては,ショックを受けた.昔の英雄が亡くなるのは仕方ないことなのだが,ちょうど訃報を聞く日にカラシニコフ氏に思いを馳せていたからだ.
AK47と言えば,世界で最も有名な自動小銃である.普通マシンガンをイメージしたら,それはAK47だ.ビンラディンが持ってたアレ,ソマリアの海賊が持ってたアレだ.史上最も人を殺した武器とも言われる.もじってアイドルグループの名称にも使われるほどだ.AK47は,設計者の名前を取って,カラシニコフとも呼ばれる.それほど,カラシニコフは偉大なデザイナーであり,英雄であった.
今年は,ゼロ戦の開発者:堀越二郎をモデルとした『風立ちぬ』が公開された.堀越二郎も英雄であった.ゼロ戦に関しては,設計を行った三菱重工業より,超々ジェラルミンを開発した住友軽金属の方が重要ではないかと,個人的には思う.しかし,堀越の英雄性に疑問はない.
『風立ちぬ』で,二郎が東京帝国大学を卒業して,三菱重工業に入社し,機械図面を引いている様子が描かれる.当時,機械の設計はエリートの仕事であった.二郎の夢の中で,カプローニが言う『設計はセンスだ』という言葉が印象的だった.機械の設計にセンスが要求される時代があったのだ.
AK47の設計は,センスがなせたものであった.AK47の設計思想は,発想の転換であり,画期的な発明だった.
今や,機械の設計にセンスなんて要求されない.大学の機械科で機械の設計を学ぶことはない.機械の設計なんて誰でもできる仕事になった.図面を引くなんて,なんの技能も要求されない.『MAKERS』にあるように,素人の方がうまくできる時代なのだ.大学に入って,一番ショックだったのはそこかもしれない.カラシニコフなり堀越二郎になりたいと思っていた.兵器が作りたいという意味ではない.偉大なデザイナーなど,もはや存在し得ないと知ったのが悲しかった.
そして,カラシニコフ氏の訃報を聞いて,完全にデザイナーが英雄の時代は終わったのだと感じる.
リーナス・トーバルズ氏やまつもとゆきひろ氏のように,今はプログラマが英雄だ.未だにオープンソースの開発者のモチベーションがよく分からないけど,彼らはカラシニコフみたいになりたいと思っていたのだろうか.プログラマが英雄の時代も,遠からず終わると考えると悲しくなるのだ.
2013年12月21日
2013年12月15日
『独裁者のためのハンドブック』
『独裁者のためのハンドブック』
"The Dictator's Handbook: Why Bad Behavior is Almost Always Good Politics"
Bruce Bueno deMesquita, Alastair Smith
四本健二,浅野宣之 訳
亜紀書房
2013年11月初版
序章 支配者を支配するルール
第1章 政治の原理 「金」と「仲間」をコントロールせよ
第2章 権力の掌握 破綻・死・混乱というチャンスを逃すな
第3章 権力の維持 味方も敵も利用せよ
第4章 財政 貧しき者から奪い、富める者に与えよ
第5章 公共事業 汚く集めて、きれいに使え
第6章 賄賂と腐敗 見返りをバラ撒いて立場を強化せよ
第7章 海外援助 自国に有利な政策を買い取れ
第8章 反乱抑止 民衆は生かさず殺さずにせよ
第9章 安全保障 軍隊で国内外の敵から身を守れ
第10章 民主化への決断 リーダーは何をなすべきか
2013年11月3日
映画『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』
本作は,TV版総集編の位置づけの前作の続編である.完全に一見さんお断りの作りであった.それでも,人がすごく入っているから,『まどマギ』の人気には驚かされる.劇場でポスターを取るために写真の前に列ができているのだから,すごいよね.
2時間スクリーンに釘付けになった.観る人を引き込む画面の吸引力が強力であった.『エヴァンゲリヲン』もそうだったが,作画が過剰になってきて,眼で追いかける限界になっている.なにが起こっているのか視認するのも,難しくなってきている.特に,まどマギの魔女の結界の表現は,シュールレアリズム的で抽象的だから,理解が追いつかない.そろそろ,ウォーホールのような表現しない表現といった禅問答的な作画が出てきそうだ.それはちょっとやめてほしいな.
前作で,まどかがキリスト化して,すべての魔法少女を救済した.(キリストは紀元後の人しか救済しなかったが,まどかは全ての時代・時空の魔法少女を救済しているという事実は,なんか面白い.)世界から魔女はいなくなり,魔法少女は魔獣と戦うという世界に書き換えられた.
はずだった.しかし,始まると,魔法少女たちはナイトメアと呼ばれるものと戦っているのだ.まどかが,なぜかいる.マミさんの横には,魔女だったはずのシャルロッテがくっついている.これはどういう世界なのか?前半は,ずっと混乱している.魔法少女5人がスーパー戦隊をしていて,変身シーンでそれぞれ踊り始めたところで,なんじゃこれは?となったよ.
ほむらがこの世界はおかしいと思い始める.杏子とともに,杏子が前にいた街に行こうとするが,辿りつけない.街から出れない.『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』を連想した.この世界は誰かが作る出した夢だ.となると,問題は誰が作った世界か?:これは誰の夢か?ということだ.
観る人も気づくとおり,ほむらが作った魔女の結界なのだ.これを壊しておしまいなら,『ビューティフル・ドリーマー』と同じになってしまうが,ここからがまさかの急展開だった.円環の理となって救済にきたまどかの一部を取り込み,ほむらは悪魔になるのであった.
ほむらが闇堕ちしたみたいな感じになっているが,別にほむらが作った世界は悪くない.全員の願いがかなっている幸せな世界だ.まどかが世界の理を変えてしまったように,ほむらがそれを変えることが悪い理由はない.ほむらの正当性に対する解答は,次回につづくかも.という後に引く終わり方であった.
2013年11月2日
2013年10月2日
2013年9月8日
2013年9月2日
マンガ『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』
2013年8月28日
2013年8月25日
2013年8月22日
2013年7月23日
2013年7月20日
『ブラック・スワン』
『ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質』
"THE BLACK SWAN"
Nassim Nicholas Taleb
望月 衛訳
上下巻
ダイヤモンド社
2009年6月初版
上巻
プロローグ
第1部 ウンベルト・エーコの反蔵書,あるいは認められたい私たちのやり口
第1章 実証的懐疑主義者への道
第2章 イフェゲニアの黒い白鳥
第3章 投機家と売春婦
第4章 千と一日,あるいはだまされないために
第5章 追認,ああ追認
第6章 講釈の誤り
第7章 希望の控えの間で暮らす
第8章 ジャコモ・カサノヴァの尽きない運―物言わぬ証拠の問題
第9章 お遊びの誤り,またの名をオタクの不確実性
第2部 私たちには先が見えない
第10章 予測のスキャンダル
下巻
第11章 鳥のフンを探して
第12章 夢の認識主義社会
第13章 画家のアペレス,あるいは予測が無理ならどうする?
第3部 果ての国に棲む灰色の白鳥
第14章 月並みの国から果ての国,また月並みの国へ
第15章 ベル・カーブ,この壮大な知的サギ
第16章 まぐれの美学
第17章 ロックの狂える人,あるいはいけない所にベル型カーブ
第18章 まやかしの不確実性
第4部 おしまい
第19章 半分ずつ,あるいは黒い白鳥に立ち向かうには
エピローグ
2013年6月19日
『ヤバい経営学』
『ヤバい経営学』
Business Exposd: The Naked Truth about What Really Goes on in the World of Business
Freek Vermeulen
元木隆一郎・山形佳史 訳
東洋経済新報社
2013年3月初版
Kindle版
Introduction モンキーストーリー
Chapter 1 今,経営で起きていること
Chapter 2 成功の罠(とそこからの脱出方法)
Chapter 3 登りつめたい衝動
Chapter 4 英雄と悪党
Chapter 5 仲間意識と影響力
Chapter 6 経営にまつわる神話
Chapter 7 暗闇の中での歩き方
Chapter 8 目に見えるものと目に見えないもの
Epilogue 裸の王様
2013年6月16日
2013年6月5日
『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』
『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』
町山智浩
文春ペーパーバックス
2008年10月初版
序章 アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない
第一章 暴走する宗教
第二章 デタラメな戦争
第三章 バブル経済と格差社会
第四章 腐った政治
第五章 ウソだらけのメディア
第六章 アメリカを救うのは誰か
終章 アメリカの時代は終わるのか
アメリカのでたらめな側面に関する5ページほどのコラムをまとめた本.時間つぶしにはいいが,一つの話題が深堀りされていないので読み応えはあまりない.
アメリカの残念さを記した本としては,ルポ 『貧困大国アメリカ』 (岩波新書)も詳しい.
夢と希望の国に見えるアメリカも実際にはむちゃくちゃな国なのだ.日本の方がよっぽどマシではないか.それでもこの閉塞感だ.世界に逃げ場所なんてないのだ.
印象的なのは3章にある『ウォルマート,激安の代償』の項である.激安のチェーン店が地元の店を潰して,雇用を破壊するのだ.しかし,ウォルマートの従業員の賃金もまた激安なのだ.資本主義とグローバル化の向かう先は日本でも同様だ.国道沿いにはチェーン店の大きな看板が立ち並ぶが,地元の商店街は寂れきっている.グローバル化が進んだ先に良い社会があるようには思えない.
2013年5月29日
2013年4月30日
2013年4月28日
2013年4月24日
『文明崩壊』下巻
『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』
下巻
ジャレド・ダイアモンド
楡井浩一 訳
草思社
2005年12月初版
上巻
プロローグ ふたつの農場の物語
第1部 現代のモンタナ
第1章 モンタナの大空の下
第2部 過去の社会
第2章 イースターに黄昏が訪れるとき
第3章 最後に生き残った人々―ピトケアン島とヘンダーソン島
第4章 古の日々―アナサジ族とその隣人たち
第5章 マヤの崩壊
第6章 ヴァイキングの序曲と遁走曲
第7章 ノルウェー領グリーンランドの開花
第8章 ノルウェー領グリーンランドの終焉
下巻
第9章 存続への二本の道筋
第3部 現代の社会
第10章 アフリカの人口危機―ルワンダの大量虐殺
第11章 ひとつの島,ふたつの国民,ふたつの歴史―ドミニカ共和国とハイチ
第12章 揺れ動く巨人,中国
第13章 搾取されるオーストラリア
第4部 将来に向けて
第14章 社会が破滅的な決断を下すのはなぜか?
第15章 大企業と環境―異なる条件,異なる結末
第16章 世界はひとつの干拓地
2013年4月2日
『機械との競争』
『機械との競争』
Race Ageinst The Machine: How the Degital Revolution is Accelerating Innovation, Driving Productivity, and Irreversibly Transforming Employment and the Economy
エリック・ブリニョルフソン,アンドリュー・マカフィー
村井章子訳
日経BP社
2013年2月初版
第1章 テクノロジーが雇用と経済に与える影響
第2章 チェス盤の残り半分にさしかかった技術と人間
第3章 創造的破壊―加速するテクノロジー,消えていく仕事
第4章 では,どうすればいいか
第5章 結論―デジタルフロンティア
解説 日本が世界と伍して戦うには (小峰隆夫)
2013年3月27日
『文明崩壊』上巻
『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』
上巻
ジャレド・ダイアモンド
楡井浩一 訳
草思社
2005年12月初版
上巻
プロローグ ふたつの農場の物語
第1部 現代のモンタナ
第1章 モンタナの大空の下
第2部 過去の社会
第2章 イースターに黄昏が訪れるとき
第3章 最後に生き残った人々―ピトケアン島とヘンダーソン島
第4章 古の日々―アナサジ族とその隣人たち
第5章 マヤの崩壊
第6章 ヴァイキングの序曲と遁走曲
第7章 ノルウェー領グリーンランドの開花
第8章 ノルウェー領グリーンランドの終焉
下巻
第9章 存続への二本の道筋
第3部 現代の社会
第10章 アフリカの人口危機―ルワンダの大量虐殺
第11章 ひとつの島,ふたつの国民,ふたつの歴史―ドミニカ共和国とハイチ
第12章 揺れ動く巨人,中国
第13章 搾取されるオーストラリア
第4部 将来に向けて
第14章 社会が破滅的な決断を下すのはなぜか?
第15章 大企業と環境―異なる条件,異なる結末
第16章 世界はひとつの干拓地
2013年3月26日
『禁断の市場』
『禁断の市場 フラクタルで見るリスクとリターン』
THE (MIS)BEHAVIOR OF MARKETS: A Fractal View of Risk, Ruin, and Reward
ベノア・B・マンデブロ,リチャード・L・ハドソン
高安秀樹 監訳
雨宮絵理,高安美佐子,冨永義治,山崎和子 訳
東洋経済新報社
2008年6月初版
序文 孤高の科学者―ベノワ・マンデルブロ
第1部 たどってきた道
第1章 リスクとリターン
第2章 運命を決めるのは,サイコロか,弓矢か?
第3章 バシェリエの功績
第4章 金融工学の楼閣
第5章 金融工学の落とし穴
第2部 新たな道
第6章 市場の乱流―はじめに
第7章 凸凹の研究―フラクタル入門
第8章 綿花価格のミステリー
第9章 長期記録―ナイル川から市場まで
第10章 ノア,ヨセフ,そして市場のバブル
第11章 トレーディング時間のマルチフラクタル性
第3部 これからの道
第12章 禁断の金融10ヵ条
第13章 実験室にて