2012年11月24日

『希望の国のエクソダス』

『希望の国のエクソダス』
村上龍
文春文庫





『「この国には何でもある.本当にいろいろなものがあります.だが,希望だけがない.」』p.314
閉塞感という言葉もいい加減聞き飽きた.失われた~年と言われてから何年たった?本書が刊行されて10年過ぎたが,状況は全く変わっていない.
 希望がないとは,なりたいものがないということだ.
『まぁ,子どもの場合ですが,とりあえず大人のやり方を真似るっていうか,参考にしていく以外に生き方を考えることはできないわけで,要するに,誰を真似すればいいのか,みたいなことがまったくわからなくなってしまっているわけです.』
現状も悪いが,このまま行った先はもっと悪いことが明らかなのにも関わらず, 解決する方法がない.この道の先には,こうはなりたくないと思える大人しかいない.
 閉塞感から日本中の中学生が学校を捨て,彼らのネットワークは新たな国家のようなものを作るようになるまでに至る.彼らの反乱の動機はよく分かる.中学生の時にこれを読んだら,一人で革命,エクソダスを起こしていたかもしらない.
 彼らのエクソダスは共産主義革命を感じずにはいられない.そして,滅びていく理由も共産主義のようになるのだろう.
『この快適で人工的な町に希望はあるのだろうか,と考えた.もし希望があるとしても,現実に向けてドライブしていく動力となるのは欲望だろう.彼らには欲望が希薄なことはポンちゃん自身が認めている.』p.424 
為替市場の話は,よく研究されて書かれているように思ったが,ディティールを詰めた現実っぽい話は,余計に虚構性を感じた.

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